一人の警察官と目が合った
都内の主要な場所では厳戒態勢が敷かれ多くの警察官が鋭い眼光を走らせる
彼女と上野の森を歩いていた時だ
蒸し暑い気候とはいえ緑は鮮やかで 日陰では風が心地よくさえ感じる
そんな中での警察官の表情はどう見ても場違いではないかと思った
存在自体が文化財となる東京芸術大学の音楽学部は私が大好きなロケーションだ
その入り口前を通り過ぎ 道を一本渡ると一気に人が少なくなった
『谷根千』と呼ばれるこの狭い地域には無数と言える「路地裏」があり
そのいたるところでネコが我が物顔で闊歩しているのを見かける
一種独特の雰囲気が残るこの場所で彼女を撮りたいと思ったのはごく自然なことだった
彼女を初めて撮ってからそれなりの時間が経過している
それでも私が抱く彼女のイメージはずっと変わらない
「今日は何もしなくていいよ。ただ立っているだけ」
「それでいいの?」
「あぁ。そして笑顔もダメ。できるだけ不機嫌そうな表情で」
彼女はよく笑う
彼女の大きくて吸い込まれそうな瞳は魅力的だ
でもだから無表情が欲しかった
立っているだけで絵になる女性はそうそういない
そんな彼女を「夢」の世界に誘うように
一匹の猫が行儀よく並んでいる
もしかしたらジブリ映画みたいにこの猫がボワっと現実になるかもしれない
今日はどんな奥行きと背景の中で彼女を捉えるのか
イメージは出来上がっているが実際はわからない
でもこの時 私の頭の中にはあるピアノ曲が流れていた
by pianoartech312
| 2016-05-27 19:00
| Portrait
|
Comments(0)