2017年 02月 04日 ( 1 )

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立春を迎えるとテレビの天気予報では枕詞のように『春とは名ばかりの・・・』と謳う

それでも確実に春は近づいていて

街の至る所で目にすることができる梅の花や 蠟梅の甘い香りが届くと私は憂鬱になる

日向に立っていると太陽の光を浴びて熱を感じることができるのだが

日陰に入ればカラカラに乾燥した冷たい風が頰を通り抜ける

「今日はあの客車で写真を撮るよ♪」

「わぁ・・・随分と古そうね。どのくらい前の車両なの?」

「ん・・・それでもまだ40年くらいじゃないかな?」

私は展示公開されている客車の説明が書かれた札の前でその歴史を読んだ

「47年前だね。でも私が子供の頃は実際に走っていたんだよ。写真だって撮ってある」

「へぇ。そんな前から写真を撮ってたのね」

「そう。これでも一応、鉄道マニアだったからね」

「そうなんだ・・・」


私は車内へ続く鉄製の階段を上る

彼女のブーツがコツコツと音を立て すぐ後ろを付いてくるのがわかった

「あぁ、アッタカイね」

「ほんとね。。。なんだか思った以上に綺麗でちょっと驚いたわ」

「もちろん、メンテナンスをする人がいるんだよ。ちょっと前はあまり綺麗じゃなかった」

「そういえば昔は電車の中でもタバコが吸えたのよね?」

「そうだね。今じゃ考えられないけど、当たり前のように吸っていた」

私は笑った

「それと窓の下に灰皿と、なぜか栓抜きがあってね」

「栓抜き?」

「そう。きっとビールでも飲んだんだろうね」

「なんだかのんびりしていた時代だったのね」

私は彼女をシートに座らせて撮影する準備を始めた

それでも彼女はこの客車が珍しいのか スッと立ち上がると通路を歩き始めた

どのくらい歩いただろう

彼女が立ち止まり窓の外を見つめていた

その姿がなんだかとても透き通るような感じがして驚いた

いつも黒ばかり着る彼女が珍しく淡い水色のコートを着ている

彼女のどこまでも白い肌が本当に透き通るようで

またそのコートの色も氷のような冷たさがあった

しばらく切っていないという髪がだいぶ伸びている

彼女を撮り始めて丸2年になる

今思えば 彼女は本当に綺麗になった

彼女は真冬がよく似合う

だから今日 彼女を撮りたかった










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by pianoartech312 | 2017-02-04 19:00 | Portrait | Comments(0)