Fleur de jasmin(4)

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晴れていれば まだ十分に太陽の光があっただろう時間だが

こんな天気ではすでに薄暗くなっている

近くの神社を訪ねた時には灯篭にも火が入っていた

「おみくじ引いて来てもいい?」

「いいけど。。。もう社務所も閉まっているのでは?」

階段を登ってみると『本日は終了しました』と札が立てられて社務所のサッシが閉まっていた

「あ〜 残念。でもお参りだけでもしていくわ」

「ご自由に。。。」

彼女はバッグから財布を取り出し 賽銭箱に投げ入れる小銭を探している

「あ!あった!」

「え?なにが?」

「おみくじよ。ほら」

今から賽銭を投げ入れようとした時 その賽銭箱の前におみくじの「箱」が置いてあるのに気付いたのだ

「ここに100円入れて一枚引けばいいのね?」

「そうじゃないかな」

私は彼女が手を合わせる所をカメラに収めようと本殿の脇に回った

「あ・・・間違えちゃった」

「え?」

「賽銭箱に入れちゃったわ」

彼女が笑った

「気持ちの問題だよ。良いんじゃない?おみくじ引いても」

彼女はしばらく考え込む仕草をした

「やっぱりダメよ。今のはお賽銭にするわ」

そう言って手を打って頭を下げた

しばらくの間 彼女は祈り続けた

目を開けてため息を一つ付くともう一度小銭を取り出しておみくじの箱に入れた

私は彼女に近づいた

彼女は取り出したおみくじをそっと広げてみた

顔がにわかに微笑んだ

「あぁ・・・彼女もこんな表情をするのか」

ファインダーを覗きながら そんな彼女の表情にドキドキした

「さて、なんだったでしょう?」

彼女がいたずらに笑う

「さぁね。私には関係ないから」

「ひどいのね。怜さんはおみくじも信じないのよね?」

「あぁ、そうだよ。でも信じる人を否定はしない」

「どういうこと?」

「どんなことでも信じることができて、それによって良い気持ちになれるのなら素晴らしい♪」

「じゃーん!」

彼女が広げたおみくじを私に見せた

「『大吉』よ!」

「それはイイね♪イイコトいっぱい書いてあるでしょ?」

「そうねぇ。イイコトあるかしら?」

「それは考え方次第だよ。信じるからくじを引くんでしょ?」

「そうよね♪」

「じゃあ、それは大切にして持ち帰ると良いよ」

「え?結ばないの?」

「もちろん自由さ。でも結ぶのは余り良くないものを『お祓い感覚』で『奉納する』んでしょ」

「そうね。せっかくだから持ち帰るわ」

そう言うと彼女は大切に折りたたんでバッグにしまった

今日 初めて彼女の幸せそうな顔を見た

写真に撮っておけば良かったかもしれないけれど

そんな大切な一瞬は 私のためだけにしておこうと思った

今度はジャスミンの花が咲く頃に 今日とは違った彼女を撮ってみようと決めた



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# by pianoartech312 | 2017-05-19 19:00 | Portrait | Comments(0)

Fleur de jasmin(3)

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天気予報よりも日差しが得られずに苦労した

都会の真ん中に広がる公園は 今の時期独特の香りがする

梅雨が近いなと思える独特の匂いと質感だ

でも だからそんな季節感を出したいとも思う

歩道の向こうが暗く落ちている桜並木

春はきっと満開の桜が派手に彩るのだと思う

でも今はもう「新緑」を通り越して十分な濃さの緑がある

それは見方を変えると「薄暗い」にもなってしまうから良い

私はそんな桜の存在感が大好きだ

鎌倉などで撮影するときも思うのだが和服美人を撮影するのは小雨くらいが良い

独特の質感が得られると思うから

でも私がそうしたことを思うのはモノクロームで撮影することを前提にしている

今日のこの場所はそんな私の想いを叶えてくれる場所になった

彼女の表情がまた良かった


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# by pianoartech312 | 2017-05-18 19:00 | Portrait | Comments(0)

Fleur de jasmin(2)

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彼女の立ち姿は実に美しいと思う

そして歩き方も良い

それは初めて彼女に会った時にすぐに思った

しかし その時は普通に洋服を着ていたからだったのかもしれない

和服をまとえば話はまるで変わる

和服や浴衣を着た時に洋服と同じ感覚で歩くからブサイクになる

しかし彼女はその「使い分け」までもが完璧にできる女性だったから驚いた

「歩き方が綺麗だよね。ゆとりが感じられるし色っぽいよ」

「そうかしら?周りからは『重い感じ』ってよく言われるわ」

「『重い』か… それは良いね。確かにそうも言えるかもしれない」


和服の彼女には少々場違いかとも思えるバラ園ではあるが

実際に来てみると悪く無いと思う

着物の柄があまり派手でもなく 地味でも無い

もう少しメリハリのある色だったりしたら変わったかもしれない

「この着物、母からの譲り受けなんです」

「そうなんだ。。。それは良いね」

「私、青が好きだから自分の着物を作る時は青系の色が良いなと思っているの」

「ふ〜ん。良いんじゃ無いかな。私も青は好きだから見てみたい♪」

「でも、もう少し上手に着付けができるようにならないとダメだわ」

「まぁ、それは経験を積まないとね。なんでもそうだよ」


私自身 和服美人を撮影するのは実に久しぶりだった

最後はもう3年くらい前だったと思う

さて 今日はどんな絵が撮れるかな?

もちろん モノクロームでも撮影するから楽しみにしている。。。


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# by pianoartech312 | 2017-05-17 19:00 | Portrait | Comments(0)

Fleur de jasmin(1)

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「私、ジャスミンが好きなの」

まるで彼女がバラの香りに包まれているような錯覚さえする中で

表情一つ変えることなく彼女がサラリと言ったことに私は驚いた

「好きなお花は?」

私は初めて撮影する女性に対しては本当に色々な質問をする

それらは大して重要なことではないが

とにかく相手に発言をさせる機会を設けることが目的で

もしくは考えさせることが目的でもある

冬なら真っ暗な時間帯でも 今頃は日没も遅いので十分に撮影ができた

それでもどんよりと曇った気候ではどことなく肌寒いようにも思えるのだが

少し動き回れば梅雨時期独特のジメッとした空気が肌にまとわりつくようでもある

そんな季節だからこそ バラの花が綺麗に咲き誇り その優雅な香りをあたり一面に放っているのだ

和服を着た女性とバラは不釣合いのような気もするが思ったほど悪くもない

彼女はそんなバラの花を一つ一つ香りを確かめるようにゆっくりと歩いていた

「へぇ。。。どうして?」

「『ジャスミン』って漢字で表記できるって知ってた?」

「そうなんだ。それは知らなかった。どんな字を書くの?」

「『茉莉花』って書くの」

「難しいね。ジャスミンティのイメージが湧かないなぁ」

私は笑った

「正確に言うと、花が好きと言うより名前が好きなんだわ」

「なるほど」


バラ園を通り過ぎて階段を降りると大きな朱塗りの門がある

その時 偶然にも雲間から太陽の光が差し込んだ

今までくすんで見えたその大きな門が一気に光り輝いて見えた

「うわぁ、綺麗・・・」

「今がチャンスだね。背景にして撮ろう♪」

すっかり新緑を通り過ぎて深い緑の葉をつけた桜の木が何本か近くにあった

その緑を借りてさらに派手にしてみようと考えた

レンズが長すぎて ちょっと中途半端な構図になってしまった

それでも良かった

「ジャスミンの花言葉は知ってる?」

本当は彼女にそう問いかけたかったけど止めることにした

私は知っていたけど 今 それを彼女に言ってしまったらちょっと申し訳ない気もした








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# by pianoartech312 | 2017-05-16 19:00 | Portrait | Comments(0)

Rollei Superpan200 と Supergrain

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この組み合わせは初めてだった

D-76 での処理を参考にすれば おおよそは見当がつくが

それでも実際に目にするとハッとする

フィルムの特性でもあるシャープネスとシャドウの締まり

同じく現像液の特性でもあるシャープネスとシャドウの締まり

こうした石造りの建造物は特に独特の表現がされて実に良い

適当なコントラストの強さが良い

ポートレイトなら嫌われるかもしれないが

再三記しているように 今の私はこれが好み

ほんの一年前なら有り得ない組み合わせだったはずだ

女性はいないが 是非ともプリントしてみたいワンカットだ


実はこの建造物は今は使用されていないらしい

ロケハンの途中でたまたま見つけた

以前からこの場所は何度も歩いているのに気づかなかった

老舗のレストランだったみたいだ

改装なのか 閉店なのかはわからない

ただ工事関係者が中で作業しているのが見えた

今ならこの前に女性を配して撮影することができるかもしれない

・・・ダメかな?(笑)


MAMIYA645Pro TL
SEKOR C80mm F1.9N
Y2
Rollei Superpan200
Rollei Supergrain 1+9 22℃ 6m30s

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# by pianoartech312 | 2017-05-15 19:00 | 現像関連 | Comments(0)