b0366473_12195797.jpg

この桜並木の終点に近づいていくと右手に運動広場があるのが見える

そこに降りるための階段があるのだが私はその下から見上げる桜並木が大好きだった

季節によって見える景色が変わる

春は満開の桜が見事だし

秋になれば紅葉する桜の葉が綺麗で

冬から桜の開花までの頃はすっかり葉の落ちた枝だけが背景の青空に浮かぶ

桜の花が終わり 緑だけになった桜の木は使い勝手が色々ある

私が好きなこの場所は難しい状況になる

葉の色と彼女の髪が溶け込んでしまうからだ

でもそこは太陽の光を受けて輝く髪を生かすこともできるので

そうした角度になる場所を探すべく彼女の立ち位置を色々と変えながら撮影してみた


「よくアニメなんかで丘の上から街を見下ろすシーンがあるでしょ?」

「そうね」

「大抵は丘の上に一本の大きな木があって その下に自転車を倒してさ・・・」

「あるある♪」

「まさに今はそんなイメージだ。理想は風で髪の毛が乱れ、それを右手で抑える仕草かな」

「作りすぎよ」

彼女は笑いながらも私の理想を理解している

「問題はライティングだ。背を向けるか、正面から受け止めるか?」

「どっちもやってみましょう」

私は彼女を立たせると 階段の一番下まで降りてカメラを構えた

しばらくジッとしている彼女にカメラを向けたまま風を待った

しかし こうした時に限って風は吹かない

「風が止んでしまったね」

「いつもそうよね」

しばらくすると 土手に生えている草が音を立て始めた

年に数回は綺麗に刈り込まれるのだが 今日は伸び放題に伸びた背の高い草が揺れ始めたのだ

それが波を打つように遠くからだんだんと近づいてくる感覚があった

「来た!」

でもそれは彼女の髪を乱すほどのものではなかった

彼女のスカートの裾を軽く フワッとさせると そのまま向こうへ行ってしまった

彼女は私を見ながら笑う

「残念ね♪」

「でも悪くなかった」

私はカメラを持って彼女に近づき 捉えた画像をモニターで彼女に見せた

「そうね。このくらいがイイかも」

「じゃあ、最後の場所に行くよ」


ようやく終点が近づいて来た


[PR]
# by pianoartech312 | 2017-06-14 19:00 | Portrait | Comments(0)

b0366473_12200064.jpg

広くはないこの公園も こうして歩いてみるとそれなりの距離がある

川を渡り 田んぼが広がる景色が近くにある

田んぼに水を供給する用水路があって その脇が桜並木になっている

車が入れない道なので轍もないし アスファルトが引き詰められている訳でもない

考えてみれば今の時代 こうした道があること自体が貴重なのかもしれない

その桜並木を奥行きに彼女を捉えてみることにした

彼女を並木の間に立たせて露出を計測してみた

「怜さん、随分焼けたみたい。顔が赤いわ」

無理もない

この日差しでは日に焼けない方がおかしい

私も頰のあたりにその感覚があったから自覚はしていた

「そうだろうなぁ。でもそれだけじゃないよ」

「えっ?」

「今日の君はとても綺麗だから、きっとそれで・・・」

「えーっ」

彼女が体を反らせながら まさに「引いた」仕草を見せる


「・・・と言いたい所だけど」

「だけど?」

「そうも言えない」

「どうして?」

「時々見せる君の表情がとても『ブサイク』なんだ」

「なにそれ!」

「でも本当だから仕方がない」

「メガネのせいかしら?」

「あぁ、そうだと思う。キツイこと言えば、似合ってない」

「相変わらず怜さんはハッキリ言うのね」

「ツーポイントにすれば良い」

「ツーポイント?」

「縁のないメガネだよ。スッキリするし気品がある」

「そうかしら?」

「今のメガネは自宅用でいい」

「考えておくわ」

「元々は綺麗な人なんだから、メガネで印象が変わるのは惜しいよ」


こうした私の独り言にも彼女は冷静に対処する

キツイこともハッキリ言う私の人柄にも慣れているのだ

でもそれは彼女に限ったことではない

私が撮影する全ての女性に同じ態度で接している

「でも怜さんみたいにハッキリ言ってもらうと、考えるきっかけになるのよ」

「そう言ってもらえると。。。」

「親しい友人ほど、そうしたことは言ってくれないわ」

「まぁ、そうだろうね」

「次回までには考えておくわ」


それでも ずっと向こうまで続く小径を背景にして彼女を見ていると

思い切りセピア色にして映画のワンシーンみたいにしてみたくなった

心地よい風が彼女のスカートの裾を軽く揺らした


[PR]
# by pianoartech312 | 2017-06-13 19:00 | Portrait | Comments(0)

b0366473_08263910.jpg

空に浮かぶ雲の間隔が広くなり 想定していなかった日差しが降り注ぐようになる

私たちはさらに歩き続け 遊歩道が整備された広い芝生広場まで来た

芝生に立ち入ってはいけない訳でもないのだが   ここには遊歩道が整備されていて

そこを歩く彼女の足元には脇にある木の影がくっきりと「焼き付いて」いる

「だいぶ暑くなって来たね」

「ほんと。今、何度あるのかしら?」

「風があるだけマシだけど、もしかしたら30度近いかもしれないね」

「きっと27度だわ」

こうした時の彼女は何故だか根拠のない確信を持っていて その言葉が妙に力強い

彼女はカバンからスマートフォンを取り出してなにやら画面を見つめている

「ほらぁ!見て!27度よ!」

彼女は現在位置の気温を確認していたのだ

「まぁ、それは観測地点の気温であって『ここ』ではないし・・・」

「でも27度という私の予想は当たっていたわ」

「まぁ、それはそうと・・なぜ27度なの?」

「直感よ」

「君はいろんなことに関して、適当にキリのいい数字を言わないよね?」

「だから直感なのよ。湿度だってわかるわ」

彼女は自信ありげに笑う

でも私はこの彼女の「自信」がとても羨ましいと思う

「ここでも撮る?」

彼女が私に聞いて来た

「そうだなぁ。。。じゃあ、この暑さを表現してみよう」

「どうするの?」

「この遊歩道の、あの木の影があるところ辺りに立って」

彼女は私の指示に従って歩き始める

「そこ!そこで止まって振り返って!」

彼女はビクッとして立ち止まり 左側からスッと振り返った

私はその瞬間を捉えた

「こうして緑を背景に順光で撮影すれば なんとなく暑さ加減も表現できるかなと思ったんだ」

「へぇ」

「そうやって本を抱えて振り返る姿は文学少女みたいで良いよ」

私は笑った




[PR]
# by pianoartech312 | 2017-06-12 19:00 | Portrait | Comments(0)

b0366473_12200672.jpg

この公園で女性を撮影したいと思ったのは もう随分と前のことだった

冬の間はバードウォッチングができて多くの渡り鳥を確認できる

春にはこの桜並木が見事に色づくし

近くにある城址公園や 森の散策路を歩いても気持ちがいい

何度も足を運んでいるし 私が好きな公園でもあったから今日の撮影はとても楽しみだった

「とにかく、今日は君の休日だ。だから本を読んでもらうよ」

「別に休日じゃなくてもそうするでしょ?」

彼女はすでに心得ている

それだけ私の考えを容易に捉えることができるようになったのだ

「でも普段でも読書はするでしょ?」

「ええ。今は洋書にハマっているわ」

「洋書?ペーパーバッグとか?」

「まぁ、そうね」

「どんな?」

「有名どころよ。例えば映画の原作とかかな」

「なるほど。それはいいね。で、今は何を?」

「スティーブン・キング!」

「それは驚き!」

私は本当に驚いた

彼女がそうした部類の作家の作品を好んでいるとは思わなかったのだ

どちらかと言えば「ホラー作家」に分類されるからだ

「ま、今日の本はそれとは正反対の『純粋な青春物語』かな」

私は彼女に本を渡した

「あ、またこの人の作品ね?」

「そうか、前回も彼の作品について色々と話したね」

「怜さんに教わって図書館で借りたわ」

「そうなんだ・・・」

彼女は行動が早い

でも彼女は実際に読書の時間が多いと思う

だから読書をしている彼女の姿に無理がなく 自然でいられる

私は彼女の読書をする姿がとても好きだ

今日はメガネもしているから好都合かもしれないな

さて 少しずつ移動しながら撮影してみよう



[PR]
# by pianoartech312 | 2017-06-11 19:00 | Portrait | Comments(0)

b0366473_12201017.jpg

「君がメガネをして来るのは珍しいね」

「コンタクトを入れるのが辛い朝もあるのよ…」

「あぁ、それはわかるな」

「怜さんもコンタクトしてた時代があるの?」

「あぁ、あるよ。サラリーマン時代はコンタクトだったしね」

「一度、メガネの習慣がつくと楽になっちゃうのよね」

彼女が笑う


彼女を撮り始めて丸2年になる

つまり3年目に入ったと言うことだ

初めの頃こそ私は彼女に色々と指示を出し

姿勢や歩き方までお説教したが 今となってはそんなことは皆無になった

そして何より彼女は綺麗になった

もちろん私に対しての慣れもあるだろうとは思う

言い換えれば彼女は私を信用してくれている

それに撮影された画像をモニターで確認して自分なりに反省をするのがすごいと思うのだ

「モデル」としての意識がとても高いのだ

「今日のテーマは『休日の過ごし方』だよ」

私が彼女に伝えると納得した様子だ

「じゃあ、普段のままね」

「そう、それでいいよ。でもたまにはこんなのどかな景色の中で読書をするのも良いものでしょ?」

この公園の周りは水田で ザリガニやドジョウがいそうな小川が流れている

水臭く 泥臭く そして新緑の香りがして本当にのどかで良い

桜並木が枝を伸ばして緑のトンネルを作る

その下をのんびりと歩きながら此処までやってきた

川の上を通り過ぎる風が冷たく 蒸し暑さを忘れさせる

決して広くはないこの公園を一回りしながら彼女を撮る予定だ

どんな絵が撮れるのか今から楽しみだ




[PR]
# by pianoartech312 | 2017-06-10 19:00 | Portrait | Comments(0)