Chanson sans paroles (6)

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今回はモノクロフィルムでの撮影には二眼レフを使用した

今年はずっとこれで撮り続けることにしている

彼女と初めて会った時にもこれで彼女を撮っているのだが

彼女はそれを覚えていなかったらしい

いつものことではあるが彼女にもこのカメラで私を撮影してもらう課題を与えた

まず誰もがそのファインダーに映る「映像」を見て驚嘆する

「うわぁ… きれい!」

気持ちはわかる

次に左右反対の「映像」に惑わされる

「あれ?・・・あ、あれっ?」

「どうした?」

「怜さんがいない!」

「頑張れ!」

彼女は必死にカメラを動かす

「あ!いた!」

それでも段々と彼女の体が硬直していくのが容易にわかる

「良いなと思ったらそこでシャッターを切ってみて」

モデルになっている私はずっと固まっている

・・・時間が経過する

「まだ?」

私は笑っている

「…ちょっと。。。」


そしてようやく彼女は意を決してシャッターを切った

しばらくの沈黙の後に彼女は眉間にシワを寄せた表情で私を見た

「ハァ・・・」

きっとシャッターを切る瞬間まで息ができなかったのだと思う

たいていの女性はそうなる

でもたいていの女性は二眼レフを構えている時の姿が絵になるもので

私はそれを見ているのがとても楽しい

普段はとても姿勢の良い彼女が慣れない仕草に体の線を曲げているのがとても新鮮だった

でも彼女はそのくらいでも良い

別に私を上手に撮ってもらうつもりなどない

上手に撮れる人もそうそうはいない

彼女の別の一面を見ることができて良かった





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# by pianoartech312 | 2017-10-18 19:00 | Portrait | Comments(0)

Chanson sans paroles (5)

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春は菜の花が一面を覆うこの沿線はその印象が強い

秋にはコスモスが咲き乱れ

さらに季節が進むと大きな銀杏の木が見事に色づいてホームにその落ち葉を敷き詰める

さすがに銀杏が黄色くなるにはまだまだ時間がかかるが

コスモスはどこの駅でも綺麗に咲いていた

なぜ彼女がハイヒールを履かずに持っているのかと言われると

説明するのに時間がかかるのでここでは記さないが裸足でいるわけでは無い

「この色のコスモスが綺麗だわ」

彼女は白いコスモスの花を指差した

白い花びらの縁が焦げ茶色で縁取られている

最近よく見かける色だけど私はあまり好きでは無い

「コスモスには香りが無いよね」

「そうかしら?」

彼女はその花に顔を近づけて香りを確かめた

「そんなこと無いわ。しっかりとした香りがする」

「へぇ、そうなんだ」

彼女のそうした仕草がとても可愛らしい

何だか今の彼女はとても楽しそうに見える

彼女は確実に変化している

きっと真冬に彼女を撮ったとしても優しい表情をしていると思う

もう少し 今の彼女を捉えておこう



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# by pianoartech312 | 2017-10-17 19:00 | Portrait | Comments(0)

Chanson sans paroles (4)

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午前中のうちはよく晴れていたのに

正午を過ぎた頃から雲が多くなり始め

ランチを済ませてから次の場所に移動した頃にはすっかりと曇っていた

吹き抜ける風が何となく肌寒く感じられることもあったが

湿気を帯びた空気感が残っていることもあって心地良くもあった

ローカル線にはよく見られる遮断機や警報機の無い踏切

前回の時にもそんな踏切で彼女を捉えたが

今回も農道の中にある踏切で彼女にレンズを向けてみた

早いところでは稲刈りの終わっている田んぼもあったが

まだそれを済ませていない田んぼを背景にして緑を確保した

曇り空の影響で全体的に青っぽくなる

光が綺麗に回ると言うよりは もうどこから撮影しても変わらないくらいだ

彼女の立ち姿は本当に綺麗で どんな状況でも姿勢が崩れることは無い

むしろもう少し柔軟性があってもいいくらいだ

ただ表情の作り方は未だに苦労しているみたいで

時々撮影後に見せるモニターの画像をチェックしては自身の表情に愕然とすることがある

しかし それは経験値が無いだけのことであって時間が経過すればすぐに改善する

私は無理に笑わせようともしないし できるだけ一連の動作の「経過」を狙っているつもりだ

ポーズを要求することも無い

だから私に撮られる女性は迷うのかもしれない

でも迷っても良いのだ

彼女が真剣に物事を考えている時の目は力がある

だから色々と質問をしては彼女の答えを導き その「過程」を狙う

彼女の腕に見える筋肉の張りが彼女の意思の強さも表現している様だった





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# by pianoartech312 | 2017-10-16 19:00 | Portrait | Comments(0)

Chanson sans paroles (3)

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確かに私は「少しだけ鉄道マニア」を公称しているが

このローカル線の魅力は辺りの景観も含めて素晴らしいと思っている

特に近くにある数本の林道はオフロードファンの間でも有名で

私も何度となく女性を連れてきてはトンネルで撮影している

たいていの女性はその景色に驚きながらも

普段は感じることのない独特の空気を全身で浴びる

予報に反して早い時間から晴れたのだが林道は薄暗い

それでも木々の間から届く光はまだまだ強く

背景と輝度差のあるコントラストを生んでいる

彼女はアウトドアがよく似合う

それは初めて彼女に出会った時から思っていた


「わぁ・・・マイナスイオンが溢れている感じがするわ」

「良いでしょ?」

「近くにこんな所があったなんて知らなかった…」

「海にしろ山にしろ、人間は自然に包まれると自分を見つめようとする。」

「そうかもしれないわ…」


彼女はスマートフォンでしきりに写真を撮っている

今更になって 彼女がそう言う人だったと思い出した

林道の広葉樹が日差しにキラキラとしている

それを背景に彼女を捉えてみる

アスファルトからの照り返しだけでも十分なレフ効果があった

なんだか楽しそうにしている彼女ではあるけれど

その姿は自然のぬくもりに包まれている様に見えた


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# by pianoartech312 | 2017-10-15 19:00 | Portrait | Comments(0)

Chanson sans paroles (2)

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季節は確実に進み

どんなに強く太陽の光が 熱が私の肌に叩きつけていても

その中には次の季節の匂いと共にもの哀しさと言える地球の感情が

その存在感を増しているのがわかる気がする


「今日のスカートは良いね。マスタードイエローか…」

前回は真夏と言うこともあって真っ白なワンピースだった彼女に色があるのは新鮮だった

「秋だから この色が良いなと思ったのよ」

「それにその靴。マリーゴールド・オレンジだ」

「良いでしょ?」

彼女はスッと右足の膝を曲げてかかとを覗き込む様な姿勢でその足元を確認した

紅葉を楽しむにはまだ少し早いけれど

それでも桜の葉はだんだんと色づいて落ち始めている

向こうに見えた柿の木にはたわわに大きな実をつけていた

「ここ、春はホームの桜が見事で綺麗なんだ」

私は何度となくここで女性を撮影している

春だったり夏だったりもするが一年を通じて絵になる背景がある

「駅にはどんなイメージがある?」

「『別れ』のイメージしかないの。哀しいイメージしかないわ」

「そうかぁ…」

私が彼女に求めているのはそう言うイメージではない

でも彼女がそう思うなら それを生かしてみようと考えた

「何れにしても、このローカル線の駅で数少ない列車を待つイメージだ。君ならどうする?」

彼女はゆっくりと歩を進めるとホーム先で止まった

私はそのまま足を揃えて立ち止まるのかと思っていたのだが

彼女は左足をスッと前に重ねると俯いた

夏にも同じ様なシチュエーションで撮影しているのに

その雰囲気はまるで違った

少し力のある風が足元を通り過ぎた

ホームに落ちていた桜の葉が ほんの少しだけ動いた様な気がした




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# by pianoartech312 | 2017-10-14 19:00 | Portrait | Comments(0)