Sous un arbre(2)

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「今回は色々な地域に行ってみるよ」

「地域?」

「そう。面白いよ」

「どういうこと?」

「日本だろ?南欧だろ?アメリカのダウンタウンだろ?それから…」

「なにそれ?」

「あぁ、あと芝生の綺麗な水辺の公園もあるし並木道の綺麗なイギリス式庭園もある!」

彼女はまったくイメージができていない様子だった

「一体、どこに行くの?」

「まぁ、いいから♪」

待ち合わせの駅で彼女は私を見つけて声をかけてくれた

約束の時間にはまだ少し早かったので1本前のバスに乗ることができた

本当なら雨の中で撮りたかったのだが

どういう訳か今年は雨に恵まれない

それなら今日の真夏日をうまく使うしかないと思った


目的地に到着してバスを降りる

容赦なく太陽の光が降り注ぐのだが思ったほどムッとしない

しかし暑さは強烈に思えた

私と彼女はしばらく木陰の道を選んで歩いていく

「ほら、見えてきた。日本家屋があるでしょ?」

「ええ、見えるわよ。あそこで撮るの?」

建物に近づいて私は指をさして彼女に言った

「裏に回ってごらん」

「裏?何で?」

「いいから♪」

納得いかない様子の彼女を無理やり建物の裏に行かせる

「あぁ!」

彼女の驚いた声が聞こえる

こういう時の彼女は子供みたいに本気で驚くから面白い

「何もないわよ!何これ!」

「面白いでしょ?」

「映画のセットなの?」

「そういう訳じゃないだろうけど…」

さらに歩いていくと南欧風の街が見えてくる

「本当だ!スペインかどこかみたいだわ!」

「いいでしょ?」

「不思議な空間ね。。。」

彼女はしばらくあちこち歩いて街の中を見ている

ベンチに手荷物を置くと羽織っていたカーディガンを脱いだ

「ここならノースリーブがいいわね」

「傘は差してね。すぐに焼けちゃうよ」


彼女が張り切っている

きっとここが気に入ってくれたんだろうな

さて 本当に暑いから手短に撮影していかないと…


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# by pianoartech312 | 2016-07-10 19:00 | Portrait | Comments(0)

Sous un arbre(1)

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「ねぇ、そのカメラ初めて見るけど…」

「あぁ、これ?…そうか、君は初めてだったか。もう随分使っているよ」

雨の少ない今年の梅雨

後になって知ったことだが 今日は今年一番の高温になった地域が多くあり

私と彼女がいたこの地区も35℃を超える暑さだったらしい

しかし意外と湿度がなく 木陰に入るととても涼しかった

私はベンチの上でカメラバッグの中身を整理していた

「いつも怜さんは、ほら、レンズが2つある、上から覗くカメラで撮ってくれたじゃない」

「そうだったね。でも最近はこのカメラの方が出番が多い」

「何が基準でカメラを選ぶの?」

「最終的には『作品展示』を考えているんだよ」

「『作品』?」

「そう。毎年9月に開催する写真展に飾る作品だよ」

「今年は私の写真も飾ってくれるの?」

「そのつもりだよ」

「そーかー!じゃあ、変なことできないわね」

冗談交じりに彼女は言うが言葉の節が真剣だと思える

彼女を撮り始めてからちょうど1年になる

今年に入ってからだろうか

彼女が急に綺麗になったと感じる

生活が変わって心身ともにゆとりができたのかもしれない

「よし、じゃあ今日はこのカメラで私を撮ってもらおう」

「えー!だってフィルムって高いんでしょ?」

「まぁ、安くはないね」

「いいの?」

「あぁ、いいよ。このカメラもまた独特な世界があって綺麗だよ」

私は彼女にカメラを渡して持ち方を教える

「本当だ!なんだか怜さんが背景に溶け込んでとっても綺麗!」

「ピントも君が見て『ここだ!』と思ったところでいいよ」

「よーし!じゃあ、怜さん、そこに立って」

彼女が私に指示を出す

彼女には彼女独特の世界があっていつも驚かされる

彼女の言う通りにしてじっとしていると彼女が笑った

「どうしたの?」

「前のカメラも良かったけど、これも面白いわ。でも息が止まっちゃうの」

全身に力を入れてカメラを構える姿を見ると私も笑ってしまった

でも彼女は本当に楽しそうだ

彼女の夏の思い出になればいいなと思う

彼女の背景の緑もまた綺麗だった


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# by pianoartech312 | 2016-07-09 19:00 | Portrait | Comments(0)

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今回でこの連載も最終回

色々と能書きを記してきましたが

なぜ私がモノクロームにこだわるのか?は正直な所自分でもわかりません

ただ以前にも記した通り今の私の中におけるイメージがモノクロームであるが故だとは思っています


ただカラーを否定している訳でもなく

本当に初めはポジばかりだったし

それからカラーネガにハマり

ここ4年くらいはモノクロームにこだわっているのです


この連載をしているうちにまたカラーネガへの回帰希望が大きくなりました

なので近々の撮影では冷凍庫に保存してあったカラーネガを使用してみたいと思っています

デジタルかフィルムか?

そのレベルと同じ感覚で「カラーかモノクロームか?」なのかもしれません

でも私にとってモノクロームでの表現追求はまだまだです


9月の写真展に向けて もうひと頑張りです♪




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# by pianoartech312 | 2016-07-08 19:00 | Portrait | Comments(0)

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昨年の秋からフィルムと現像液・現像方法が固まった

この写真はそのきっかけとなるものだ

色々と試してみたかったことがあって

彼女にもそれは説明していた

この写真に関しても「顔の表情は完全に潰れるから」と前置きして撮影してみたもの

とにかく黒の再現とシャープネスをみたかった

その結果に驚愕した

彼女が記すノートの 実に美しい再現!

潰した黒がなんともシットリとした感覚!

そういう状況下であるにしても このフィルムでなければ出せない「色」だと確信した

以来 私はこの組み合わせで女性を撮影し続けている

時には新しいフィルムを試すこともあるが根幹は変わらない

決める時は「これ」と思っている

本当ならば少しでもレフを当てて彼女の表情を引き出すべきだったかもしれない

でも まずは結果に満足してしまって それでどころではなかった




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# by pianoartech312 | 2016-07-07 19:00 | Portrait | Comments(0)

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普段なら こうしたカフェの店内でカメラを構えることはまずしない

他のお客様にも迷惑だし

物理的にも被写体との距離が近すぎることもある

しかし私が使用するMAMIYA C330 という二眼レフは接近戦に強い

こうした状況でも十分に対応できるしスクエアが効いた

彼女の「前髪パッツン」がとても良くて可愛らしいと思った

それに初めて見るカメラに注ぐ視線がまた何ともよかった

薄暗い店内でもスローシャッターでしっかりと捉えることができたのはカメラのおかげ

そしてこのフィルムの醸し出す雰囲気がとても気に入っている

カラーネガだったら難しい状況だった

でもモノクロなら少々の荒れが「味」になるから面白い

だからフィルムはやめられない



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# by pianoartech312 | 2016-07-06 19:00 | Portrait | Comments(0)