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Portrait

Sakura Days(1)

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ひと月前には満開の桜がトンネルとなって その下を歩く人々を桜の香りで包み込んでいた

もちろん桜の香りを認識できる人などそう多くはない

でも私はそれを感じることができる

永遠と思われるその桜並木を彼女と歩いていると目の前に緩やかな上り坂が見えた

私は彼女との会話もそっちのけに独り彼女をおいて小走りにその坂道を登ってみた

鬱蒼と言えるくらいの桜の新緑が辺りを薄暗くするほどだった

丘の頂点にまで上り詰めると私は振り返った

そしてそこには期待していた景色が広がっている

「景色」を期待していたのではない

彼女の歩く姿を期待していたのだ



「なんで今日はその服装にしたのかな?」

私は特別 彼女に注文はしていない

彼女だけじゃない

撮影するすべての女性に対して服装や髪型に注文はつけない

「きっと怜さんはこんな感じの私を期待していたんじゃないかなって思ったの」


彼女は本当にスマートだ

初めて彼女に会った時 正直な所 私は物足りなさを感じていた

何が足りないのかわからない

でも何かが足りなかった

ところがしばらく色々と話をしているうちにその感覚は失われ 「怖い」という印象が生まれた

彼女が怖いのではない

彼女の言葉の一つ一つが怖いのだ

「無知の知」のごとく 本当に彼女の言葉は冷静で的確だったから


でも彼女を知る人は 彼女に対するイメージは違うはず

誰をも優しく包み込む不思議な力がある

それは安心感かもしれないし 憧れかもしれない


私のことを気にすることもなく自分のペースでゆっくりと歩いて丘を登る彼女が良かった

そんな彼女を丘の上で立ち止まって見ている私に追いついた彼女は私の顔を見るなり

少し首をかしげて「どうしたの?」と言葉には出さないものの 私を伺った

「何を考えながら歩いていたの?」

私はずっとそう思いながら彼女を見ていたのだ

「…空が四角いなぁ。。。って」

私は笑ってしまった

途切れた桜並木から見えた空が四角いと捉えた彼女の感性が可笑しかった

今日はこの彼女と この何処までも続く桜並木を歩き続ける

どんな表情が見られるのか楽しみだった





by pianoartech312 | 2016-05-17 19:00 | Portrait | Comments(0)

女性ポートレイトとモノクロフィルムについて追求しています♪


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