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Portrait

Epilogue(2)

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たいして強い降り方ではなかったけれど

それなりの雨になった

しかし湿度が異常に高く 何もしなくても空気が肌にジットリとまとわりつく感覚だった

でも私にしてみるとその気象条件が欲しかった

雨の中の撮影は楽じゃない

でも雨は好きで昨年も多く撮影した記憶がある

「私は『晴れ女』だから、きっと晴れるわ」

彼女は得意げに言う

「でも今回は雨が欲しいんだよ。君が嫌いな雨だけど…」

「どうして?」

「考えてもみてよ。一年を通してみると雨の日の方が少ない。だから貴重と言える」

「私は嫌よ。足元は濡れるし。でも寒くないだけでも良いかな」


彼女とランチにしようかと話をしていた時にポツポツと来た

食事を済ませて店を出る頃にはそれなりの降り方だった

「よかったわね。怜さんの理想的な天気になって」

「そうだね。雨が降っているうちに撮影を済ませよう♪」

「普通、反対じゃない?」

「何が?」

「『雨が降らないうちに済ませよう』じゃない?」

彼女は笑った

路地裏に入った脇にあった何かの工房の軒下で彼女が私に声をかけた

「ちょっと待って。カーディガンを脱ぐわ。何だかとっても蒸し暑い…」

彼女は店に入ってからすぐに「エアコンが寒い」と言ってカーディガンを羽織った

ところが店を出た途端にムッとする空気に触れて

しかも少なからず雨にも濡れているのだから当然の行為だろう

でもそんな仕草が良くて私はシャッターを切った

「ここもイイなぁ。…ここでも撮ってみよう♪」

私はフィルムカメラを取り出して彼女を軒下に立たせた

奥行きはないけれど狭い路地は雰囲気がイイ

雨の日の 少し青白い光が私は好きだった


by pianoartech312 | 2016-07-16 19:00 | Portrait | Comments(0)

女性ポートレイトとモノクロフィルムについて追求しています♪


by pianoartech312
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